86(ハチロク)は、トヨタがスバルと共同開発し、小型・軽量のFRレイアウトを持つ2.0Lの2ドアスポーツタイプ車です。その販売価格は若年層を狙い低価格に設定されていますが、現実的な最低価格は240万円台であり、購買層が40歳代から50歳代となったのは当然。
トヨタ側は「特別なクルマ」として扱いたがるものの、北米ではサイオンブランドで販売する低価格の2ドアクーペであり、国内でもそういう考えで購入されていいと思います。
値引きでは相変わらず渋いものの、「ロードスター」や「S660」などの登場で、ターゲット層側の選択肢が広がったことで、対抗上僅かではありますが、交渉の余地が出来つつあります。そこで、現在「86/BRZ」と同価格帯のスポーツタイプとしてマッツダの「ロードスター」を値引きという側面から比較してみました。
値引き比較表
トヨタ 86 | スバル BRZ | マツダ ロードスター | |
---|---|---|---|
車両価格 | 2,488,909~3,173,237円 | 2,408,400~3,007,800円 | 2,494,800~3,142,800円 |
月販目標台数 | 1000台 | 450台 | 500台 |
値引き予想額 | 10万円 | 10万円 | 5~15万円 |
リセールバリュー (A・B・C) | B | B | A |
発売年月日 | 2012年4月発売 | 2012年4月発売 | 2015年5月発売 |
最終変更時期 | 2015年2月 一部改良 | 2015年2月 一部改良 | |
同クラス人気度 (A・B・C・D・E) | A | A | A |
トヨタ86
ディーラーでは「トクベツな車」でも、ユーザーには「普通の2ドアクーペ」
豊田社長肝いりの若者のクルマ離れを食い止めるスポーツカー「86」も、ふたを開ければ40~50台のユーザーが大半。やはり20台の若者には、240万円台の車両価格は手が届かないようだ。”オジサン”達にとっては可能な価格だが、家族がいれば2ドアは事実上購入不可能。それでも購入出来るのは、子供が独立したさらに年齢が上の先輩諸氏か、2台めを所有出来る環境の方。
これらの方々は「86/BRZ」を購入する予算はあるが、そう簡単に契約はしません。今までに何台も買い替えてきた経験上、「200万円オーバーの新車ならこの位」という自分なりの値引き条件を考えています。
もちろんディーラー側は「トクベツなクルマ」を声高にアピールし、値引きが不可能という姿勢で対応するでしょう。これまでは競合する車種としてはスバルの同型「BRZ」と「旧ロードスター」でしたが、「ロードスター」がモデルチェンジされ、「S660」など魅力的な車種が出ると、こちらに選択肢がある極めて健全な状態になります。
値引き交渉に応じないのであれば「それでは残念ながら他車種を検討せざるを得ない」という事になります。これで終わってはディーラーとしては商売にならないので、「ここはご相談を」という事に。
競合する車種の見積もりを取っても無駄ではないが、どれも新機種で「86」の値引きを引き出すほどの数字は期待できません。強いて言えば「ロードスター」は中でも可能性があると言えますが。
20万円程度の値引きは可能と思われますが、15万円を目安に交渉し、オプションなどの値引きを加えて総支払額で20万円に近づければ成功でしょう。
スバルBRZ
スバリストを演じるのは損
トヨタほど「トクベツな車」を主張しなくても、熱心なカーマニアが多いスバルファン。「86」との違いも、なぜあえて「スバル」なのかも説明不要のスバリストが、ユーザーのみならず営業マンにも多いのが実は厄介だ。値引き交渉に入るまでのウンチクを聞き始めるときりがない。スバルファンであることは言わない方が得策。同じクルマなら安い方で買うという単純明快な姿勢を伝えることが重要。「86」より安く出来るか出来ないかの検討をディーラー側にしてもらいましょう。
マツダ ロードスター
期待ほど売れていないのでは?
RHT無しでの割高な価格設定と、他にラインナップがあるのでは?と思わせるダウンサイジングされた1.5Lエンジンが、その実力とは裏腹に商談でユーザーが煮えきらない態度に陥ってしまうのが、マツダ営業マンの悩みの種。
試乗させて納得してもらうが、そもそも旧型のユーザー以外には「1.5Lでも問題なし」とはいかない。「たったの1.5Lなのか?それで2.0Lの時より高いのか?」というのは、日本のクルマ好きに特有な数字至上主義ではそう簡単に納得出来ない。
今では考えられない大フィーバーとなった初代「ユーノスロードスター」の発売当初も、メーカーの縛りで値引きが事実上不可能であったが、実は発売当初から値引きは行われていました。額はまちまちですが、決断を迫る最後の一押しにはやはり値引きが一番というのが鉄則です。
小型スポーツタイプ車の今後
200万円台を超える車両価格は、メーカーがどんなに頑張っても若年層には購入出来ない価格。トヨタが言う、旧レビン/トレノも新車でそれ程売れていたわけではなく、人気となったのは中古車市場に大量に出回り、50~60万円も出せば手に入る、安くて乗りやすい車種だったため。新車で購入していたのはやはり年配の層、ベースのカローラ/スプリンターより価格が上でも購入出来た層であった。
従って「86/BRZ」が若い層に人気が出るとしたらあと少し待つ必要があるでしょう。出来れば低価格設定のグレードを追加設定するなど、走行性能よりも買いやすさをアピールしてもらいたい。「ロードスター」の人気は必要とするニーズが限られているため、しばらくすれば他車種並になることが予想されます。