直近の販売成績を見ると軽自動車の販売に陰りが見え始めています。
しかし、ハイブリッド車を除けばまだまだ登録車よりも売れていて、新規機種の登場などで一気に活性化される期待もあります。
そんな中でも目立つのが日産の「デイズ」です。
三菱との合弁会社「NMKV」が企画・開発したことで話題を集めましたが、販売台数では登場以来伸び悩んできました。
それが昨年の後半から急激に状況が改善。
今ではホンダの「N-BOX」に次ぐ軽トールワゴンのトップブランドにまでなっています。
そして、10月22日にマイナーチェンジを行ったことにより、さらにその勢いに弾みが付くことになるでしょう。
そこで、値引きという側面からライバルとの違いを探ってみました。
値引き比較表
デイズ | ワゴンR | ムーブ | N-WGN | |
---|---|---|---|---|
車両価格(円) | 1,150,200~ | 1,078,920~ | 1,134,000~ | 1,090,000~ |
JC08モード燃費 (㎞/L) |
30.4~ | 33.0~ | 31.0~ | 29.4~ |
値引き予想額 (万円) |
12~14 | 10~12 | 10~12 | 12~14 |
リセールバリュー (A~C) |
B | A | A | B |
発売年月日 | 2013年6月 | 2012年9月 FMC | 2014年12月 FMC | 2013年11月 |
最新改良年月日 | 2015年10月MC | 2015年8月一部改良 | 2015年4月一部改良 | 2015年4月一部改良 |
同クラス人気度 (A~E) |
C | A | B | C |
日産デイズ
三菱ekワゴンとの相見積もりが最後の一手
発売から2年4ヶ月目に行われた今回のマイナーチェンジでは、運転者安全支援システムの充実や、「ボレロ」の新設定などでなど装備の充実とラインナップの強化を図っている「デイズ」。
このところの販売では際立った成果を挙げていると述べましたが、軽自協の統計では「デイズ」とスーパートールワゴンの「デイズルークス」が同シリーズとしてカウントされるため個々の販売実績は解りません。
他社の割合から見て半々の割合だと予想すると、実質的にはホンダの「N-WGN」以下となり、当然それ以外のライバルとは大きく差が付けられていることになり、けっしてヒット車種ということにはならないのが見えてきます。
したがって、「デイズはこれだけ多く売れているヒット車種なので、お値引きは・・・」というディーラーの説明は意味を持ちません。
正直ライバル相手に苦戦していると言っていいでしょう。
マイナーチェンジ後でも状況は変わりませんので、競合車種との相見積もりは必須。
そして、最後の決断の前に三菱の「ekワゴン」を利用することが「デイズ」攻略の決め手になります。
ある程度の取り決めがあるとは思いますが、売ったもん勝ちの世界ですから大いに活用しましょう。
トールワゴン+スーパートールワゴンメーカー別販売台数
車名 | 台数 | 車名 | 台数 | 合計台数 |
---|---|---|---|---|
N-BOX | 12276 | N-WGN | 6154 | 18430 |
タント | 10069 | ムーヴ | 6840 | 16909 |
ワゴンR | 7096 | スペーシア | 6265 | 13361 |
デイズ | 9717 | 9717 |
全国軽自動車協会連合会2015年10月度発表資料
http://www.zenkeijikyo.or.jp/statistics/index.html
デイズマイナーチェンジの概要
新たに、「ハイビームアシスト」を軽自動車で初採用したほか、これまでメーカーオプション設定だったエマージェンシーブレーキと踏み間違い衝突防止アシスト、VDCなどの各種安全装備が全グレードに標準装備した。
また、アイドリングストップ機能とバッテリーアシストを新搭載したことで全車で燃費を向上している。
併せて、コンパクトカーのマーチに次いでの設定となる「ボレロ」を新たに設定することを発表した。
スズキワゴンR
人気者の身内のために値引きもやむなし
発売直後には伸び悩んでいましたが今のところ順調な販売成績。
しかし、ライバルの「ムーヴ」との差は僅かであり、さらには伏兵の「キャスト」も登場しましたので殿様商売というわけにはいきません。
燃費ではアドバンテージがあると思われていますが、「Sエネチャージ」装備車は最上級車のみの設定で、しかもせっかくの燃費の差が帳消しになる価格なので実際には通常の「エネチャージ」車が中心の販売になってます。
それでも売れているのですから、燃費以外の魅力もあるのは確かでしょう。
実際の値引き額は、同社の「ハスラー」よりは多いと思っていいでしょう。
潜在ユーザーのかなりの台数が「ハスラー」に流れており、「ハスラー」より生産台数の多い「ムーブ」にとっては面倒な存在になっています。
そして「ラパンン」には女性客を持って行かれている状況もあります。
競合相手は「ムーブ」だけで構いません。
他に検討車種があるという意思が示せれば十分でしょう。
軽自動車の値引き幅は大きくないので、1~2万円の値引きをめぐってあちこちのディーラーをまわるのはあまり意味が無いのです。
それよりも車種による価格の差をしっかりと把握して、必要な装備の有無を確認することが重要です。
あとはオプション類を、値引きも含めて注文書に計上するか、部品として別注文するかなどの判断も必要でしょう。
ダイハツムーヴ
キャストの話題性と勢いに苦戦中
モデルチェンジ以降順調な販売成績をしめしていた「ムーブ」も、ここへ来てやや停滞気味。
軽自動車全体が低調ということもありますが、なんと言っても「キャスト」の大躍進が「ムーブ」に大きな影響を与えているようです。
10月に初めて統計にカウントされると、何と「ムーブ」どころか「ハスラー」と「ワゴンR」をも押さえてクラストップ(デイズはシリーズトータルのため、ここでは半数と判断)になってしまいました。
これには相当数の「ムーヴ」予備軍が持って行かれてといっていいでしょう。
新車効果ということもあり、落ち着けばユーザーも「ムーヴ」に戻って来るかもしれませんが、スズキの「ハスラー」のように完全に主力車種になる可能性もありますので、ディーラーとしては戦う武器が増えて嬉しい限りですが、こと「ムーヴ」の販売に限れば厳しい状況が続くでしょう。
値引きが押さえ目の「キャスト」に対して「ムーヴなら・・・」という提案が出てくる可能性が十分予想されますので、「ムーヴ」「キャスト」両方の見積と条件提示を同時に要求するのがいいでしょう。
他社との競合は「もちろん検討している」という意思を示せれば十分です。
ホンダ N-WGN
N-BOX以外は低調なNシリーズ N‐ONEとともに狙い目車種に浮上
常に軽自動車のトップどころか「アクア」をも抜くこともある「N-BOX」の快進撃を見ると、「N-WGN」「N‐ONE」といった車種の低調ぶりが目立ちます。
特に「N‐ONE」の低迷ぶりは目を覆うばかりで、販売台数で同程度なのはOEM車種の「トヨタピクシス」や「日産モコ」といった具合。
「N-WGN」は低調な販売が続いているとはいえ、同クラスでは僅差であり頑張っていると言えるでしょう。
実質的には「デイズ」といい勝負をしているので、ここは「デイズ」との相見積もりと行きましょう。
両車ともこの軽トールワゴンクラスの平均的なスペックと装備であり、しいて言えばパワーは「N-WGN」、燃費では「デイズ」ということですが、ユーザーが実感できるほどではないので、最後にはやはり値引き。
ホンダでは「N‐ONE」も含めて交渉することで、買い得な車種がハッキリしてきます。
転換期に入った軽トールワゴン
依然として軽自動車の主力車種に君臨する「デイズ」を始めとする軽トールワゴンですが、どうやら大きな転換期を迎えているようです。
圧倒的な販売台数を誇る「N-BOX」以外はドングリの背比べ状態のこのクラスは、各車独自の技術によって低燃費性能を向上。
「ワゴンR」に至っては33.0㎞/Lという低燃費を達成していますが、それでも決定的な優位とはなっていません。
ユーザーにとって性能も装備もサイズも似ているのなら、少しでも安く買いたいと思うのは当然のこと。
結局は利幅の少ない中での競争になっています。
そこで、他にライバルのいない個性的なトールワゴンを投入するという機運が高まってきました。
そのキッカケは何といってもスズキの「ハスラー」。
ありそうでなかったSUVルックスのトールワゴンという新しいジャンルを切り開き、今ではベースとなった「ワゴンR」さえ凌ぐスズキの主力車種に成長しています。
ダイハツは「ウェイク」こそ期待外れでしたが、3つのバリエーションの「キャスト」を投入。
まだ出たばかりですが「ハスラー」をも抑える販売台数になっています。
これらの個性的な車種の成功は、膠着状態の軽トールワゴン市場を活性化し、メーカーの利益にも貢献しているわけですが、既存のトールワゴンしかラインナップされない日産/三菱にとっては大きな影響を与えています。
最後発として、彼らこそ斬新なアイデアのモデルを作るチャンスがあるはずなのですが、今の所は計画は聞こえてきません。
そうなると、販売を維持するには値引きもやむ無しとなるのは当然の流れと言っていいでしょう。
ユーザーにとっては有難い話ですが。