2016年8月にフルモデルチェンジされた日産のミニバン「セレナ」は、自動運転を可能にする「プロパイロット」などの先進安全技術を装備したことで話題となり、先行予約を含めた受注もかなり抱えているようです。
このクラスで先行するのはトヨタの「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」からなる3姉妹ですが、先代「セレナ」はモデル末期でも単体では「ヴォクシー」び次ぐ販売台数を誇っていました。
もちろん、モデル末期ということで値引きも大きかったことは間違いないのですが、根強い人気を持つモデルであったのも事実です。
新型になった「セレナ」、迎え撃つトヨタの3姉妹、そして不振から抜け出せない「ステップワゴン」という、新型が出揃った5ナンバーサイズミニバンを値引きという面から比較してみます。
目次
5ナンバーサイズミニバンの値引き比較表
セレナ |
ノア ヴォクシー エスクァイア |
ステップワゴン | |
---|---|---|---|
排気量 | 2.0L Sハイブリッド | 2.0L 1.8Lハイブリッド | 1.5L直噴ターボ |
車両価格(円) | 2,435,400~ | 2,254,255~ | 2,288,000~ |
JC08モード燃費 | 15.0~17.2 | 14.0~23.8 | 15.0~17.0 |
値引き予想額 | 0~5万円 | 14~16万円 | 18~20万円 |
リセールバリュー (A~C) |
A | A | B |
発売年月日 | 2016年8月FMC | 2014年1月FMC | 2015年4月FMC |
最終変更時期 | 2016年1月一部改良 | 2016年5月一部改良 | |
人気度(A~E) | A | A | B |
日産セレナ
2016年1~6月期販売台数
セレナ 35,123台
ヴォクシー 44,377台
ノア 25,139台
エスクァイア 23,092台
ステップワゴン 28,699台
現金値引きは限りなく0というのがフルモデルチェンジされた人気車種の鉄則です。
特に「セレナ」は好調なスタートダッシュを見せているので値引きする理由もありません。
年末から年始にかけてまでは顧客代替を中心の販売が多く、査定アップなどの対策を取っており、他銘柄ユーザーよりはトー経つで安く購入できるはずです。
「プロパイロット」の効果で多銘柄ユーザーの流入も多いのですが、現金値引きはありません。
納期もかかるので良いことなしなのに加え、「セレナ」はライバルより割高。
それでも欲しくなる車を作れば問題はないという道理です。
しかし、顧客代替が一段落するであろう翌年春ごろには販売台数も納期も落ち着くはずです。
そして、「プロパイロット」の話題も落ち着いて、あらためてライバルとの比較をすると、価格や燃費などの欠点が浮き出てきます。
ただでさえ強力なラバルがいるクラスですから、ミニバンにとってもっとも重要な燃費、価格に決定的なウィークポイントをかかえたままだと、最新モデルといえども販売競争を生き抜くのは至難の業です。
その時、ディーラーが値引きという選択肢を取るのも当然です。
問題はそれがいつ頃かというところですが、春以降でライバルから競争力ある追加設定された時ではないでしょうか。
トヨタ ノア/ヴォクシー/エスクァイア
8月度販売台数
ヴォクシー 6,412台
ノア 3,964台
エスクァイア 3,210台
ステップワゴン 3,159台
セレナ4,392台 8月24日発売
実際にはヴォクシーだけが売れている事実
マイナーチェンジされてブラッシュアップされた不動の人気ハイブリッドミニバンも、「セレナ」の陰に危機感を募らせます。
特にモデル末期の「セレナ」に負けていた「ノア」と「エスクァイア」を販売する店舗ではかなり前から「セレナ」に対する対策が取られています。
「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」からなる3姉妹合計では「アクア」に匹敵する販売台数を誇りますが、それぞれの台数では、ネッツ店扱いの「ヴォクシー」が常にトップ10に入るほかは、8月24日に発売されて実質1週間の販売期間しかなかった「セレナ」より低く、さらに、トヨタ店トヨペット店で扱う「エスクワイア」はは2チャネルで販売されているのにもかかわらず、販売が低迷しているといわれる「ステップワゴン」ほどしか売れていないのです。
対セレナに値引き攻勢も
メーカーとしてはどの車種が売れようが、3車合計で売れればいいのですが、各ディーラーはそうはいきません。
「ヴォクシー」を扱うネッツ店は別にしても、「ノア」「エスクァイア」を扱うディラーでは新型「セレナ」の登場で、かなり打撃をうけるはずです。
古くから「ノア」を販売するカローラ店には膨大な数のミニバンの顧客がおり、代替需要だけでもある程度の台数は見込めるはずが、変わり映えしない現行モデルへの代替が進まず、目新しい「セレナ」へ流出する台数も多いようですです。
そうなれば、割高で値引きも出来ない「セレナ」に対して、お得感をアピールする値引きは拡大しなくてはなりません。
セレナより強力なライバル、シエンタ
ノア/ヴォクシー/エスクァイア 合計 13,586台
シエンタ 9,518台
さらに、トヨタ製ミニバンの足元を揺るがすのが、全店扱いの「シエンタ」の存在です。
「ノア」クラスからこのコンパクトミニバンに乗り変えるケースが多く、ディーラー内では他にユーザーが流出するよりはマシですから積極的に販促活動を行い、その結果大ヒット車種に成長しています。
ところが、ホンダが「フリード」のフルモデルチェンジを行ったことで、「シエンタ」でさえユーザーを引き留められなくなっているのです。
益々厳しくなるトヨタのミニバンラインナップの中で、最も苦しい販売をしいられている「ノア」と「エスクァイア」は、値引きがさらに大きくなっても不思議ではありません。
ホンダ ステップワゴン
伸び悩む販売状況
鳴り物入りで投入された、1.5Lダウンサイジングターボエンジンがユーザーの心を捉えきれず、販売不振の上にライバルがフルモデルチェンジで話題を集めているとなれば、「ステップワゴン」が値引きを拡大するのは当然でしょう。
予定ではハイブリッド車が登場してもおかしくない時期ですが、どうやら延期された様子ですから、ディーラーサイドも落胆したでしょう。
身内の的がホンダにも
そのかわり、「フリード」がフルモデルチェンジされたことにより、ディーラーとしては「ステップワゴン」への代替に躊躇する顧客に対して「フリード」を勧めることになります。
トヨタの「シエンタ」の場合と同様に、「ステップワゴン」の販売がさらに落ち込むのは確実で、さらに値引きが増える恥です。
そして、その要因は「セレナ」ではなく「フリード」なのです。
総評 組み合わせは多様になる競合車
新型「セレナ」の話題で盛り上がる2016年後半の自動車市場ですが、ファミリーカーの定番車種として定着していた5ナンバーサイズミニバンも、そろそろ陰りが見え始めています。
「プロパイロット」のようなタイムリーな話題を提供出来れば別ですが、これでミニバン3車が出そろったことで、当分は大きな話題は望めません。
その代わりに注目を集まるのが、9月にフルモデルチェンジされた「フリード」や、2015年にフルモデルチェンジされてから、「ヴォクシー」をも押さえて大ヒット車種となった「シエンタ」といったコンパクトミニバンです。
「セレナ」「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」「ステップワゴン」に、「シエンタ」「フリード」を加えて選択肢の多くなったミニバン選びは、競合車がどれなのかを見定めることが重要になりそうです。